月と星とカピバラとー宵の乙女的日常ー

お洒落もオタ活も頑張りたいオタク。

12月に読んだものの感想・まとめ~小説編~

f:id:oborodukiyo0312:20220112024720j:plain

 先月の読了本は4冊。うち『時の娘』は卒論研究も兼ねてます。

先々月の読了はこちら。

 

www.yoi-otome.net

 

www.yoi-otome.net

目次

 

全裸刑事チャーリー/七尾与史/宝島社

あらすじ

 ヌーディスト法が施行されて一年がたった。人々の価値観が多様化して、ついに日本は全裸生活を認めることとなった。反対勢力も強く、国会は揉めに揉めたが、ヌーディスト派である時の総理大臣が「全裸は究極のエコだ」と意味不明な理屈でごり押しして、彼は生まれたままの姿で法の施行を高らかに宣言したのである。それは警視庁も例外ではなく、全国初の全裸刑事が登場した ――。 警部・茶理太郎、通称チャーリー。捜査一課強行犯第5係に属する全裸刑事が、数々の難事件を解決に導く !

 『ドS刑事』や『死亡フラグが立ちました!』の七尾与史先生の新作。実はこの方の作品を読んだのは初めてだったりする。あらすじだけでも分かると思うけれど、とんでもない作品が出ました。ちなみに目次はこんな感じ。いや~~、ヤバい。
f:id:oborodukiyo0312:20220114012621j:image

 舞台はヌーディスト法が施工された現代日本。人々は生まれたままの姿で日常を過ごす全裸派と着衣派に分かれています。全裸派のために全裸専用車両があったり、全裸専門ファッション店(自主規制用のペイントや服が売っている)があったりと、全裸カフェ(コーヒーに入れる砂糖を自主規制でかき混ぜるのである。衛生管理ェ…)があったりと世紀末か?!と言いたくなる有様。身体を鍛えている人の裸ならまだしも、脂肪だるだるのおっさんの全裸が強制的に視界に入ってくるとか地獄では?

 そんななか、全国で初めて誕生したのが全裸刑事・チャーリーこと茶理太郎。「全裸こそ人のあるべき本来の姿」と主張する彼は、元々、トレンチコートの似合う数々の事件を解決してきた名刑事だった。全裸になってからもその推理力は健在。自主規制が切り取られた遺体の謎や、全裸派の男性同士の痴情の縺れなどを巧みに解決していく。チャーリーの部下で語り手の七尾(作者と同名、着衣派)や、実家が下着屋で全裸派を憎むチン紋(察して)鑑定の名手・ベンさんと、チャーリーとのコミカルで下品なやり取りも面白い。

「七尾。この期に及んでお前はまだそんなものを着てるのか?」

「ええ。スーツは僕のポリシーです。僕は原子じゃありませんからね」

「服なんてものは虚飾だ。そんなもので飾り立てないと人前に出られないなんて情けな  いと思わないのか。そんなんだからお前は物事の本質を見失うんだ」

「チャーリーさんの股間の本質なんて見たくもないですよっ!」

博多豚骨ラーメンズ/木崎ちあき/メディアワークス文庫

あらすじ

 主が戻った探偵事務所に、女子大生の素行調査が舞い込んだ。馬場と林の潜入先となった高校に、なぜか復讐屋マルティネスと麻薬取締官リカルドの影がちらつき……。
 青少年を狙う違法な麻薬取引を追う二人が、博多の街を蝕むある組織の存在に近づいていくなか、馬場と林も巻き込まれていく。一方、別の依頼で動いていた榎田も加わり、事件は思いも寄らぬ混迷へと向かっていき―ー。
 ハロウィンの狂騒に浮かれる博多の夜に、悪人同士の化かし合いが開幕する!

 何気にアニメ2期を期待している『博多豚骨ラーメンズ』シリーズの第10巻。金遣いが荒い娘の素行調査を受け潜入捜査に乗り出した、探偵の馬場と居候で女装の殺し屋・林。麻薬取引の元締めを狙う、麻薬調査官のリカルドと拷問屋のマルティネス。人生に絶望し死ぬ前に強盗を計画する、ネット掲示板で集まった3人。それを手伝うハッカーの榎田。それぞれの関わる事件は複雑に絡み合い、ハロウィンの夜の思わぬ混沌へと繋がっていきます。
 それぞれターゲットを追い求め、ナイトクラブのハロウィンイベントに潜入するのだけど、強盗とハロウィンの仮装のおかげで面倒くさい事態になってしまうのが今回のおもしろポイント。成り行きで発生した、探偵所コンビと麻薬調査コンビの共闘が胸アツ。はかとんと言えばやっぱ戦闘シーンよ。馬場が飛ばした鉄パイプがリカルドの相手の頭にクリーンヒットするところがツボ。裏社会の男たちの痛快な群像劇は10巻でも健在です。

時の娘/ジョセフィン・テイ/ハヤカワ文庫

 卒論がシェイクスピアの『リチャード三世』だったので研究がてら読了。リチャード三世は、英国でもっとも悪名高い王様。王位継承者の王子たちを暗殺し、玉座についたとされていますが、そんなリチャード三世悪人説に一石を投じたのが、およそ70年前に刊行された本作。(この作品以前にもリチャード三世擁護論はあったが、世間一般にそれが広く知られるきっかけとなったという意)

あらすじ

国史上最も悪名高い王、リチャード三世――彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリ不朽の名作。

 犯人追跡中にケガをしたスコットランドヤードのグラント警部。知人に勧められ、歴史のミステリーを調べて暇をつぶしていた彼は、リチャード三世の肖像画を目にして、疑問を覚える。「この男は本当に悪人なのか?」。なんとこのグラント警部、長年の捜査経験から、相手の顔を見るだけで、その人の性格を見抜き、事件の犯人を見分けることが出来るという特異な能力を持っているである。けれどもそんな彼のリチャード三世に対するファーストインプレッションは「あまりに良心的すぎた人物」。自らの疑問を確かめるため、グラント警部は、文献から歴史上の真実を紐解いていく。

 リチャード三世に対する世間の印象は、シェイクスピアが戯曲『リチャード三世』において彼を極悪非道な悪党として描いたことに拠るものが大きい。しかし実際のところ、リチャード三世が作中で書かれているような悪行(甥殺し、敵対貴族の処刑)等を率先して行ったという証拠は見つかっていない。また、シェイクスピアはリチャード三世が戦いで敗れたチューダー朝に生きた人物であり、『リチャード三世』がチューダー朝の正当性を主張するために書かれた作品である可能性は十分にあり得る。

 本作『時の娘』はミステリ小説という形態でありながらも、そんな捻じ曲げられたかもしれない歴史の真実に迫る作品となっている。

またあおう/畠中恵/新潮文庫

 妖の見える大店の跡取り「若だんな」と、彼の周囲を取り巻く妖たちの活躍を描く、「しゃばけ」シリーズの番外編。

お江戸は日本橋。長崎屋の跡取り息子、若だんなこと一太郎の周りには、愉快な妖たちが沢山。そんな仲間を紹介しようとして楽しい騒動が起きる「長崎屋あれこれ」、屏風のぞきや金次らが『桃太郎』の世界に迷い込む「またあおう」、若だんなが長崎屋を継いだ後のお話で、妖退治の高僧・寛朝の形見をめぐる波乱を描く「かたみわけ」など豪華5編を収録した、文庫でしか読めない待望のシリーズ外伝。

 特に印象的だったのは、名僧・寛朝が亡くなった後の話。あの病弱な若だんなが長崎屋を継いでいることに時の流れを感じて、嬉しくなった一方、準レギュラーだった寛朝さんが亡くなったことに一抹の寂しさを覚えたり。亡くなったあとも、訳アリの品を巡ってひと騒動起こしてしまうあたりが(本人のせいじゃないけど)寛朝さんらしい。妖たちが付喪神によって本の中に引っ張りこまれ、桃太郎の鬼役にさせられてしまう話も面白かったです。屏風のぞきってたまにめっちゃかっこいいところ見せるよね。

 
今回紹介した本は全てKindle Unlimitedにあります。電子書籍ユーザーは本や漫画、雑誌200万冊以上が月額読み放題のこちらがおすすめ。

某書評家が本紹介系TikTokerを活動停止に追い込んだことについて

 久々にTwitterの読書垢を覗いたらタイムラインが荒れていて驚きました。てっきりハヤカワの絶版本特集云々の話かと思ったらどうやらそうでもないらしい。読書界隈、地味に週一くらいの頻度で燃えてません?何でも今回は名の知れた書評家がTikTokで本の紹介をしている一般人に難癖をつけて、その方がTikTokでの活動を停止する事態になったとか。大元の書評家のツイートも見たけれど、一言で言うとヤバい。

 要約すると「TikTokのような低俗なコンテンツで本が紹介されて、それが売れてもちっとも嬉しくないと思いませんか?あんなのの紹介で一時のブームになるなんて馬鹿馬鹿しい。そもそもあの人(TikToker)に書評が書けるんですか(笑)?」みたいな感じ。いや、やべえ。私はそのTikTokerさんがどんな風に本を紹介しているのかは存じ上げないのですけど、TikTokのようないくら再生されても収益が発生しない、ほぼ趣味でやるようなコンテンツで活動する一般人を、その道のプロが難癖つけて活動停止にまで追い込む構図、グロすぎる。文学系Youtuberさんとかではなく、TikTokで活動してる方をターゲットにしているのがこれまた姑息さを感じるというか。

 若者の活字離れだの出版業界は斜陽産業だの散々言われている崖っぷちの状況で、書評家という本を愛しているはずの職業の人間が、新規参入者の入る可能性を潰すってどうよ。TikTok は今各出版社が欲しがっている10代~20代の若い読者を獲得するのにぴったりなコンテンツだと思うのだけれど。そもそもどんな形であれ、自分の本が紹介されるのは、大抵の作家さんにとって嬉しいことなのではないでしょうか。本が売れない今、バズでも何がきっかけでもいいから一冊でも売れてくれというのが、作家や出版社、書店の総意だと思います。

 それに「TikTokみたいなもんで売れても…」っておっしゃってますけど、新規読者獲得における貢献度においては、書評のような業界の内輪の人間かマニアしか読まないものよりも、大衆向けのTikTokのほうが高いと思われます。これは書評というものが時代遅れとか無意味とかそういうことではなく、単にそれぞれの性質の違いの話ですが。

 業界の先細りによる将来の自身の立場に対する不安からか、単なる嫉妬なのか、件の書評家がどんな気持ちであんな攻撃的なツイートをしたのかは、私にはその真意は分かりかねますが、その道のプロが趣味でやっている一般人を活動停止にまで追い込んだことは、(その後の謝罪ツイートの不満げな文章含め)許されるべきことではないと個人的に思います。何にせよ、Twitter文学賞のようにSNSを通じて長年活躍してきたような方が、同じネットコンテンツ上で活動している方に対し、あのような発言をしたという事実が残念でなりません。

11月に読んだもののまとめ・感想-漫画編-

f:id:oborodukiyo0312:20211209041224j:image

  雨森小夜ちゃんの3Dお披露目が突如中止になって咽び泣いています。いつもの感じならまあ小夜ちゃんっぽいよねで済む話ですが、今回は親族の関係でいうのが心配。大丈夫かな。

  さて、今回は11月に読んだものをまとめ・感想の漫画編です。小説編はこちら。

https://www.yoi-otome.net/entry/2021/12/05/063753

先月読んだのは5作品でしたが、全部面白かったです。少女漫画に混ざる百姓貴族の異質さよ……。

『恋に無駄口』1-6巻/福山リョウコ/白泉社

  アニメにもなった『覆面系ノイズ』の福山リョウコ先生の新連載です。元女子校を舞台に、顔はいいけどどこか残念な仁科、葵、シロ、マヤの男子高校生4人が、無形文化遺産代行保存部・通称無駄部の活動を通して、恋に青春にと勤しむというお話。

  この作品何がヤバいって、男子達のふざけた言動と唐突に訪れる恋愛沙汰とのギャップにキュンキュンさせられること。普段の4人って無駄部の活動で「食パン咥えてダッシュしたら曲がり角で女の子とぶつかって恋に落ちるのか」とか「人は夕日に向かってどこまで走れるのか」とかほんっっとうにくだらないことを検証したり駄弁ったりしてるんですよ。そんなふざけた日常を送っている彼らが、気になる女の子と接近して赤面したり、幼馴染が他校の男子と仲良くしてる姿を見てモヤったりするのギャップがヤバすぎません?!温度差でグッピーが死ぬ。私ギャグ系の漫画ってあまり得意じゃないんですが、この作品はギャグパートもとっつきやすい面白さだし、むしろギャグパートがあるからこそ、その落差でときめかせられます。l

 カップリングも

  少女漫画ラブで真面目キャラな仁科×仁科をライバル視する漫研の叶

  ハイテンションな超鈍感男子・葵×葵に猛アピール中の幼馴染芽李

  可愛い担当の常識人・シロ×超ツンデレな生徒会長・麗華

  イケメン御曹司だけど圧倒的残念・マヤ×拗らせ気味なマヤの婚約者・天音様

ととても個性豊か。絶対に気になるカップリングがあるはず。

ジーンブライド1』高野ひと深/祥伝社

 『私の少年』の高野ひと深先生の新作です。女性であるが故の生きづらさに日々絶望を感じている依知。そんな彼女はある時、高校時代の同級生・蒔人と再会します。昔の出来事のお礼をしにきたという蒔人に初めは軽快する依知ですが、彼と行動を共にしたり、ちょっとした事件に巻き込まれるうちに次第に心を許していき……?というストーリー。

 この作品のキャッチコピーは「このクソみたいな世界で生き抜くあなたをこの物語は決してひとりにしない」です。犯罪まがいのセクハラを受けたり、女であるがために仕事相手に対等に見てもらえない依知の心の内は、女性なら誰しもが共感するものだと思います。そして「女性の生きにくさ」に対して鈍感な蒔人についても思うところあるはず。現代日本を生きる等身大の主人公・依知が蒔人との出会いによりどう成長していくのか注目です。依知が学生時代に起こった事件とか依知と蒔人が通ってた学校の「ジーンブライド」制度等の謎も気になるところ。

 本作については過去により詳しい記事も書いているので、よければそちらも覗いてみて下さい。

清少納言と申します 1-2』PEACH-PIT/講談社KCコミックス

 「歴史上の人物で一番尊敬する人は誰?」と聞かれたらあなたは何と答えますか?織田信長福沢諭吉キング牧師?私は迷わず「清少納言です」と答えます。まあ生まれてこの方そんな質問をされたことはありませんが。だって彼女がいなければ所謂歴史の敗者である定子の存在なんて、歴史の影に埋もれていたに違いありません。ペン一つで歴史の勝者である彰子よりも主・定子の存在を後世に知らしめるなんて恰好良すぎませんか?肝心の枕草紙も本当に本当に面白くて大好きです。教養の深さと感受性の豊かさが分かる文章、堪りません。

 私のオタク語りはここまでにして『清少納言と申します』の話に入ろうと思います。作者は『しゅごキャラ!』や『ローゼンメイデン』のPEACH-PIT先生。実は本作の存在自体は枕草子ファンとして、かなり前から存じ上げていたのですが、なんかぶっ飛んでいそうな気がして様子見していました。

 で、実際に読んでみた感想なのですが、やっぱりぶっ飛んでました。物語は清少納言橘則光に嫁ぐところから始まるのですが、嫁にきた清少納言(以下なぎ子)の派手な身なりに、則光の姉はドン引き。こんなのを大事な弟の妻にするわけにはと、2人を離縁させるためになぎ子の弱みを探りにかかります。そして何だかんだ色々あってなぎ子が実は♂だったという衝撃的事実が判明!!ともう1話から飛ばしまくりです。

 けれど驚いたことに、こんなにもぶっ飛んだお話にも関わらず、元ネタにかなり忠実。例えばなぎ子の初登場のシーンで、彼女は葦で作らせたグラサン(笑)をかけてるんですが、これについて「目の前に小さな御簾があればいいのになって思って」と発言したり、野党に襲われた際に裾をたくし上げて……(お下品なのであとは想像にお任せ)というくだりがあったりと作者すごい研究してる!?とビビり散らかしました。ちなみに後者は清少納言の晩年の伝説的なエピソードです。枕草紙ファンが大好きな「香炉峰の雪」ネタももちろん出てきます。

 なぎ子についても性別は♂ですが、心は女性って風なので、定子様に対し疚しい感じではなく、原作のように「理想のお姫様」として見ているというのにもスタンディングオベーション。原点ネタを織り交ぜながら、オリジナリティー溢れる作品に仕上げていて、ベテランの力量を実感させられました。けど、流石に「あなやー」が悲鳴?なのには笑う。なぎ子以外のキャラも個性豊かで面白いです。光源氏のモデルと言われる藤原実方、後に望月の世を謳歌する藤原道長などそれぞれ従来の人物像とはだいぶ異なっていますがめちゃめちゃ魅力的。不穏な雰囲気漂う道長にちょっとキュンとしてしまったの、清少納言推しとしては不覚なんですが!?

 ところでこの作品、どこの本屋に行ってもなぜか3巻だけないんですよね。いい加減続きが読みたいところ。

『推しの子 6』赤坂アカ×横槍メンゴ/集英社ヤングジャンプコミックス

 わざわざあらすじを語るまでもないでしょう『推しの子』の新刊です。前巻に引き続き2.5次元舞台編。前の巻では、原作者と脚本家のすれ違いに普段「原作改変とかまじないわー」とか愚痴っちゃってる自分を思い出して若干胃が痛くなりましたが、今回は演技のお話がメインだったので、門外漢としては楽しく読めました。

 やっぱあれですね!メルト君が報われてよかったです!!「今日あま」でやらかした自覚がある分、彼のプレッシャーは相当なものだったと思いますが、「演技が下手」というのを逆手に取ったやり方が格好良かったです。発破をかけたアクア君いつもながらナイス。

 あとはやはり、かなちゃんとあかねちゃんの演技のぶつかり合いでしょうか。演技について一ミリも分からないので上手く言えないですが、かなちゃんに憧れて、芸能界入りしたあかねちゃんが、今のかなちゃんを奮い立たせる装置の役割を果たしているのがアツいなあと思います。そういえばアクア君が仮定の話として「自分が芸能界にいる理由(母の仇への復讐)」を語った際に、「一緒に殺してあげる」とあかねちゃん答えたましたが、最高だと思います。どっちかというと、かなちゃんとくっついて欲しいけれど。

 今回一番笑ったのは、「女の連絡先をガツガツ聞いてくる2.5役者は大抵エグい!」のくだりです。それなーーー!!1

百姓貴族 7』荒川弘/新書館

 『鋼の錬金術師』、『銀の匙』の荒川弘先生がおくる抱腹絶倒の百姓エッセイ、待望の7巻。荒川家が酪農を辞めたあとの話だったり、荒川家のペットのお話だったり、野菜泥棒の話だったりと今回も色々楽しませてもらいました。野菜泥棒については心が痛むのであれですが。

 一番記憶に残っているのは、特定の香りと記憶が結びつく「プルースト効果」について。大豆ミートバーガーを食べてて焼いた豆の匂いで、昔の農作業の記憶が呼び起こされるってなんか嫌だ。雨上がりの後のアスファルトの臭いで、中学時代の部活動のトラウマを思い出す私と近しいものがありますね。あとは、テレビでよくみる農家や農作業の風景の舞台裏の話も印象深いです。ドラマの撮影で使ってない小屋を貸したら、全焼するという設定で燃やされたというのがヤバかったです。事前許可なしで燃やすって訴えたら勝てる事案では……?

 

今回紹介した本は全てKindle Unlimitedにあります。電子書籍ユーザーは本や漫画、雑誌200万冊以上が月額読み放題のこちらがおすすめ。

 

 

                           

 

11月に読んだものの感想・まとめー小説篇ー

f:id:oborodukiyo0312:20211205220619j:plain

メガ割で購入したものがぜんぶ届きました。ゆるゆるレビューしていきたいです。今回は11月に読んだ本のまとめと感想。時間があれば後でそれぞれ記事にしていきたいです。漫画もまとめようと思ったけれど、想定より文字数が多くなってしまったのでそれは次の記事で。

 

『ジョン、全裸連盟へ行く』北原尚彦/ハヤカワ文庫

 皆様、BBCのドラマ「SHERLOCK」を観たことはありますでしょうか?ベネディクト・カンバーバッチが主演のあれです。もしもホームズが現代にいたら?という現代版シャーロック・ホームズ。ベネ様演じるホームズの変人っぷり、ワトソン氏のちょっと抜けてるけど頼れる相棒感がたまりません。最新の科学技術を駆使しての推理も必見。

f:id:oborodukiyo0312:20211205040725j:plain

 そんなBBC版「SHERLOCK」のパスティーシュ作品がこちら。原作シャーロック・ホームズではなく、現代版ホームズの二次創作。いや、これ商業として発売できたのすごいな。この本、短編集でして全6話が収録されています。表題作の「ジョン、全裸連盟へ行く」は、221Bを訪れた客の依頼を受けてジョンが文字通り全裸で過ごすことが決まりごとのクラブ「全裸連盟」へ潜入するお話。なんじゃそりゃ?と思いますが、その団体にはとある秘密があって…。オチはちょっとジョンが気の毒だけど、思わずクスッと笑ってしまうようなもの。どのお話も短いながら上質なミステリだったり、オチが秀逸だったりと魅力たっぷり。個人的に一番面白かったのは「ジョンと人生のねじれた女」でした。また先の全裸連盟が原作の赤毛連盟のオマージュであることは自明ですが、他の短編も「まだらの紐」や「唇のねじれた男」等のオマージュで、原作へのリスペクトが感じられるのも良いところ。ドラマのあの事件の合間にはこんなことがあったんだなとキャストを思い浮かべつつ妄想するとより楽しめます。

『おひとり様作家、いよいよ猫を飼う。」真梨幸子/幻冬舎文庫

 猫好き・作家のエッセイ好きとして、タイトルだけで「買うしかなくない!?」となった本。真梨幸子先生と言えば、『殺人鬼フジコの衝動』などいわゆるイヤミスの印象が強いですが、こういう文章も書かれるんですね。作家デビューは果たしたものの鳴かず飛ばずで極貧生活をしていた頃のことから、フジコがヒットした時の話、買っている猫ちゃんにメロメロな日々の様子まで作家・真梨幸子のプライベートが覗ける一冊です。合間に出てくる先生の愛猫の写真がたまらない……!!なお、猫ちゃんが出てくるのは中盤になってからです。

 個人的に印象に残ったのはやはり先生の極貧時代のお話でしょうか。デビューして4年も売れず、執筆の傍ら派遣バイトを掛け持ちする日々。それでも年収200万いくか行かないか。更にはマンションのローンまで抱え……という。本屋に行っても自分の本が一冊も置いていなかったエピソードとか地味に堪えます。自分が同じ立場だったら4年も経たずに作家辞めていることでしょう。それでもフジコのヒットで人気作家の仲間入りを果たした先生は(実力は勿論あるけど)おそらく運のいい方。今でも執筆だけで食べていけない作家なんて7-8割くらいいるんじゃないでしょうか。出版業界、時代遅れのビジネスモデルどうにかしようよ……。推し作家にスパチャさせろ下さい。

 重いエピソードもあるとはいえ、文章自体は軽快でとても読みやすいです。何気ない日々の記録から感じられる先生の知識量の多さとか、感受性の高さ、猫ちゃんに甘々な姿なんかも魅力。作家さんのエッセイ気になるけど小難しそう……って人におすすめしたい一冊です。

『革命前夜』須賀しのぶ/文春文庫

 幕末が舞台の和製ロミジュリこと『荒城に白百合ありて』が面白かったので、同作家さんの作品のなかでも評判の良い『革命前夜』も購入。少女小説好きと言っておきながら荒城が出るまで須賀先生を履修してなかったんですか?!とか言ってはいけない

 舞台は、ベルリンの壁崩壊前のドイツ。ピアニストの眞山柊史(以下シュウ)はバブル期の日本を離れ、東ドイツに音楽留学をしています。天才ヴァイオリニストのラカトシュや、秀才イェンツ、北朝鮮からの留学生で独自の演奏技術を持つ同じピアノ科の李など、才能に揉まれながら自分の音を追い求めるシュウは、ある時教会で美しい音色を奏でるオルガン奏者の女性と運命の出会いを果たすことに。けれど、彼女はシュタージ(国家警察のようなもの)の監視対象者で……というストーリー。冷戦下の不安定で閉鎖的な東ドイツで、主人公が音楽家として成長していくさまを描いています。

 この作品の一番の魅力は、やはり須賀先生の描写の巧みさにあると思います。私たちは当時の東ドイツのことなんて歴史の知識でしか知らない筈なのに、作中の世界観に難なく入り込むことが出来る。これについては解説で朝井リョウ先生が分かりやすく説明して下さっているので、そちらの引用を。

 前者は、自分自身が存在しない世界を舞台に物語を作り上げることができる。この作品の舞台である、ベルリンの壁崩壊直前のドイツに、須賀さんはいない。取材のために赴くこともできない。ピアニストを目指す主人公のように、ドレスデンにある音楽大学に留学したこともないはずだ。だけど書けるのだ。須賀さんの文章は、対象への巨大な好奇心、興味関心、そして圧倒的な想像力と構成力に基づいている。

 歴史小説にしろファンタジー小説にしろ、私たちが経験していない、知らない世界が舞台の作品において、読者に何の違和感も持たせずに物語にのめり込ませるには相応の力量が必要だと私は思っていますが、須賀先生はその力が飛びぬけている。東の不自由で閉鎖的な環境に不満を持つ人たち、反面シュタージに秘密裏に協力する人物たち、密告によってばらばらになる一家……。各々の苦悩や悲哀をドイツにおける他者であるシュウの目を通して描写することにより、読者が感情移入しやすくなっている。世界史の教科書にでは他人事のようにしか思えなかったベルリンの壁崩壊にあんなに感動するとは……。最後の一ページが神。当時の東ドイツの光景をありありと思い浮かべることが出来るような巧みな情景描写にも脱帽。そして須賀先生、音楽を「書く」技術も凄いです。恩田陸以来だよ。文章でピアノの音色を想像できるなんて。

『虚構推理短編集 岩永琴子の純真』城平京/講談社タイガ文庫

 雪女関連の短編2つが面白かったです。虚構推理シリーズ、「嘘で事件を解決する」っていうコンセプトが新鮮でいいよね。岩永琴子嬢はやは可愛い。アニメ2期決定おめでとうございます。 

『悪役令嬢と鬼畜騎士』猫田/一迅社

※辛辣なので注意

 インスタで漫画版の広告を見て「お!!これは激重なヤンデレ!!」と期待して購入。小説版にしたのは、漫画が分冊販売だったのと単純に文のほうが基本好きだからです。期待しすぎました。なろう系漫画原作ライトノベルって、漫画で読んだ方がいいわ。絵で印象大分変ってくるし、不要な部分削ってくれるし。男性のツェツィに対する激重感情は好みでしたが、如何せん文章が痛々しい。主人公・ツェツィは前世記憶持ちの悪女なんですが、彼女の心情描写が……。前世で一般人だった人(しかも性行為の経験もある)が、終始無知でか弱くて鈍感ですって感じなのがせっかくの前世記憶持ち要素を台無しにしていて。男性陣が主人公の絶世の美貌にやられてノックアウトされていくさまを「え?みんなどうしちゃったの?私何かしちゃった?」みたいに受けてるのにありえねーよと突っ込んでしまったごめんなさい。なんか古の夢小説の天然愛され系美少女主人公感についていけなかったです。これが商業……??メインヒーローなろう主人公っぽい薄っぺらい最強描写も苦手でした。これから読む人は漫画版のほうが多分いい。

 

今回紹介した本は全てKindle Unlimitedにあります。電子書籍ユーザーは本や漫画、雑誌200万冊以上が月額読み放題のこちらがおすすめ。

これは戦う私たちのための少女漫画ー高野ひと深『ジーンブライド』感想ー

 f:id:oborodukiyo0312:20211127045219p:plain

  だんだん寒くなってきました。キーボードを触る指が驚くほどひんやりしていてビ

ビります。そろそろ音ゲーユーザーには辛い時期になりそう。今日明日はプリライです

が、現地参戦の方は寒さ対策をしっかりして下さいね。メットライフドーム、マジで寒

いので(県民)。プリンセスみんなが笑顔でライブを楽しめますように。

 さて、今日の記事は最近読んで面白かった漫画について。終ヴィル救済√の感想の冒

頭でちょこっと言及したやつです。私、その月の新刊は調べて、何を買うか事前に決め

ているんですが、この新刊は完全にノーマークでした。作者さんの試し読みツイートが

たまたま回ってきてよかった……!Twitterの販促から漫画を買ったのって実は初めて。

それくらい試し読みで心奪われた作品です。

 作品名は「ジーンブライド」。「ジューン(June)」ではなく、「ジーン(Gene)」で 

す。遺伝子という意味の単語。作者は「私の少年」で有名な高野ひと深先生。下のあら

すじは公式様より引用しました。

女であるゆえの生きづらさに、日々新鮮に絶望する諫早依知(30)。 
仕事相手からのセクハラにも、変質者との遭遇にも飽き飽きだ。
そんな彼女の元へ、元同級生の正木蒔人が突然会いに来た。 
15年前の出来事の礼に来たと言う彼を依知は警戒するが、独特なペースで生きる蒔人は依知を全くおびやかさない。
依知の護身のための奇抜な解決策を蒔人が提案したり、イレギュラーな事態に弱い蒔人の探しものを依知が手伝ったり。
凸凹なふたりは互いに助け合う仲になっていき……?

これは、現実を生き抜くあなたの手を取る物語。

 この漫画の特筆すべき点は、女性なら誰しもが共感する要素がふんだんに盛り込まれ

ているところ。主人公の諫早依知は、女であるが故の「生きづらさ」に対し、日々絶望

と諦めを感じている女性。彼女がランニングコースで自分を見て〇〇〇ーをするおっさ

んに遭遇したり、仕事で男性と二人きりになった瞬間、セクハラまがいの質問を受けた

りする姿は女ならみんな既視感を覚えるんじゃないでしょうか。バイト先で初めてセク 

ハラ電話を受けた時を思い出したよ私は。顔も名前も知らない女相手にハアハア言って

んじゃねーぞ。

 作中でとりわけきつかったのは、依知が「女だから」仕事で男性と同じ土俵にすら立

てなかった場面。依知は記者のような仕事をしており、映画監督に新作の演出について

インタビューするシーンがあるのですが、真面目に仕事をする彼女に対して監督は、

「こんな綺麗な方初めて見た」とか「そんなに褒められると男はみんな勘違いしちゃ

う」と真面目に取り合っていない様子。取材後の依知の心の声「はァ~~~うんこたれ

がよ」にガチで共感。

f:id:oborodukiyo0312:20211127072451p:plain

 依知の時は上記のような態度だった監督ですが、別の機会で男性である蒔人が依知と

全く同じ質問をしたときは、「良く気づいてくれた!!」とでもいうように、映画監督

として、嬉しそうな笑顔を見せるんです。お前依知の話なんも聞いてなかっただろ。仕

事で来てたんだぞ彼女は。自分が男だったら、仕事に対してもっと真剣に向き合ってく

れたんだと気づいてしまった依知の心情は如何ばかりか。もう一巻だけでも身に覚えの

ある「女性だから」起こることが多すぎて、依知への共感が強くなるばかり。それら一

つ一つに怒りを覚えながらも、どこか諦めた様子の彼女の様子もリアルです。何故こち

らが慣れなければならないのか。

 そして女にしかわからない生きづらさをより強調しているのが、蒔人の鈍感さ。彼は

依知が何故男性への取材のとき同行を頼んだのか(セクハラ自衛)、何故女性が虫よけ

用の指輪を探すのか、何故トイレにペンがあると女は場所を移動するのか(盗撮)全く

分かっていない様子。ネジに見せかけた小型カメラとか靴に仕込むレンズとか女性なら

注意喚起でみんな知ってそうだけど、男性側の認識は薄いものなんでしょうか。こっち

は電車で向かい側に座っている男性のスマホの向きにすら恐怖を覚えることがあるとい

のに。そんな鈍感な蒔人に対する依知の「いいよね。あんたらはあんたらのことだけ考

えてりゃいいんだから。あたしらはあんたらのことまで考えておかないと死ぬかもしれ

ないってのに」言葉の威力は凄まじいです。依知の強烈なカウンターを受けて、色々調

べる蒔人さんが真面目で可愛い。

f:id:oborodukiyo0312:20211127072929p:plain

 第一巻は導入のような感じで、依知と蒔人がちょっとした出来事の数々を経て、仲良

くなっていく様子が丁寧に描かれています。第二巻以降で依知が男性不振に陥るきっか

けとなった学生時代の事件や2人の通っていた学校の独自システム・ジーンブライドに

ついて明かされるようですが、それらも含め、これから2人がどんな道を辿るのかに注

目。

 この作品のキャッチコピーは『このクソみたいな世界で生き抜くあなたをこの物語は

決してひとりにしない』。等身大の女性主人公・依知がどうやって理不尽な世の中を生

き抜いていくか一人の女性としてとても楽しみです。

 

2021年11月上旬の気になる新刊ー文庫編ー

 

f:id:oborodukiyo0312:20211028012117j:plain

 来月上旬の新刊(1日~15日)で気になるものをまとめてみた。下旬刊行ものも後日。個人の趣味にしか配慮していません。漫画版もやりたい。

参考はこちら。調べるのが難しいので、ハードカバーや雑誌類は除外。

文庫発売日一覧 | ほんのひきだし (hon-hikidashi.jp)

文庫

11月4日

 ウエスト・サイド・ストーリー【新訳版】/アーヴィング・シュルマン/早川書房

f:id:oborodukiyo0312:20211028012911j:plain

ミュージカルの定番・ニューヨーク版『ロミオとジュリエット』が新訳で刊行。12月公開の映画版の予習もかねて買っておきたい一冊。

 

11月8日

 テヘランでロリータを読む/アーザル・ナフィーシー/河出書房

f:id:oborodukiyo0312:20211029051640j:plainイスラム教国家であるイランで、ヴェールの着用を拒否し、大学を追われた著者が開いた読書会を描く。イランで生きる女性たちの不自由、そうした状況下において文学がどのような役割を果たすのかに注目。

 

11月9日

 レフトハンド・ブラザーフッド(上・下)/知念実希人/文藝春秋

f:id:oborodukiyo0312:20211028015432j:plain

天久鷹央の推理カルテ』『仮面病棟』の知念先生の新作。ミステリ×医療と言えばやはりこの方。知念先生少し前Twitterが荒れてたけど、どうなったんだろう。

 

 モンテレッジオ 小さな村の旅する本屋の物語/内田洋子/文藝春秋

f:id:oborodukiyo0312:20211029052901j:plainイタリアの山奥の村・モンテレッジオではかつて本の行商でイタリアを旅し、生計を立てている人たちがいた。彼らの子孫を追いかけ、本についての話を綴ったノンフィクションが文庫化。内田洋子氏といえば、「ミラノの太陽、シチリアの月」等で有名なイタリア在住のエッセイスト。今月最も注目している作品。

11月10日

 続・魔法科高校の劣等生 メイジアン・カンパニー(3)/佐島勤/電撃文庫

f:id:oborodukiyo0312:20211029054255j:plain

 

魔法科高校の劣等生シリーズの大学生編、第3巻がいよいよきちゃー!達也と深雪の活躍に今後とも目が離せない!

 

 

11月12日

マンスフィールド・パーク/ジェーン・オースティン/岩波書店

f:id:oborodukiyo0312:20211029055035j:plainオースティンと言えば、その巧みな人物描写が特徴。どんな登場人物も「いるいる、こんな奴!」ってなってしまうのよね。古い作品なのに共感できてしまう。本作はオースティン史上最も内気な主人公とのことで、『高慢と偏見』や『ジェーン・エア』とはまた違った面白さがありそう!

 

こんなにエロい古事記の神々/林義人/河出書房

f:id:oborodukiyo0312:20211029055934j:plain

 

日本列島は神様のS〇Xによって生まれた?!?!神話って一見難しく思えるけど、実はそんなでもない。ギリシャ神話とかも大概やばいしね。「エロ」に対する好奇心は古今東西いつの時代でも変わらないもの。

 

魂の形について/多田智満子/ちくま学芸文庫

f:id:oborodukiyo0312:20211029060711j:plain鳥や花、蝶、蜜蜂どんなものにも宿っている「魂」の形について思案したエッセイ。魂というものは本当に存在するのか?肉体との関係性は?「アニミズム」という概念のある日本人ならではの切り口だなあと思います。詩人のエッセイって読んだことがないので、どんな感じか今からワクワク。章タイトルが「漂えるプシュケー」や「心臓から蓮華へ」などロマンチック。

江戸衣装図絵 奥方と町娘たち/菊池ひと美/筑摩書房

f:id:oborodukiyo0312:20211029062214p:plain約260年も続いた江戸時代。女性の着物の柄や帯の結び方、アクセサリーなどがどんな風に変化していったのかをカラーイラストで紹介。お洒落が好きな人は純粋に楽しめるし、イラストを描いている方なんかは参考になりそう!同日に男性バージョンも刊行予定。

 

つげ忠男コレクション/ちくま文庫

f:id:oborodukiyo0312:20211029063004j:plainアングラ・サブカル的な作風の漫画、所謂ガロ系の巨匠・つげ義男の珠玉の作品を選出し収録。本書籍に収録されるのは、「ガロ」以降の作品群とのことなので、ガロとはまた違った味がありそう。吉田類との初対談もあるそうです。

 

11月15日

茉莉花官吏伝 十一 その才、花と共に発くを争うことなかれ/石田リンネ/KADOKAWA

f:id:oborodukiyo0312:20211029063820p:plain官吏としてどんどん手柄をたてる茉莉花が、次に与えられたミッションは潜入調査?!この作品、流行りの中華風ファンタジーのなかでも上位の面白さなんです!人より“ちょっと”記憶力のいい女性官吏・茉莉花と皇帝・珀陽のもどかしい恋模様?がたまらない。

 

女王オフィーリアよ、己の死の謎を解け/石田リンネ/KADOKAWA

f:id:oborodukiyo0312:20211029064835j:plain上の茉莉花官吏伝と同じ作者さんの作品。洋風の物語は「おこぼれ姫」シリーズ以来では?何者かに殺害された女王オフィーリア。彼女は妖精に与えられた死後10日の猶予を使って、自分を殺した人物の正体を追う。王宮ものしかも復讐系ジャンルなので、権謀術数とか駆け引きが楽しめそう!大いに期待。

 

 

皆川博子『開かせていただき光栄です』読切前日譚「Let's sing a song of……」感想(ハヤカワミステリマガジン11月号)

f:id:oborodukiyo0312:20211023000537j:plain

 皆川博子先生の代表作『開かせていただき光栄です』の読み切りが、ハヤカワミステリマガジン11月号に掲載されていると聞き、購入。つい数か月前に、この「エドワード・ターナー三部作」完結巻の『インタビュー・ウィズ・ザ・プリズナー』が刊行されたばかりだったけれど、まさか読切という形でエド達バートンズに再会できるなんて!!と感無量。という訳で今回は、この読み切りについての感想を。

そもそも「エドワード・ターナー三部作」って?

 ダーク・ミステリの女王・皆川博子先生が綴る『開かせていただき光栄です』、『アルモニカ・ディアボリカ』、『インタビュー・ウィズ・ザ・プリズナー』の三作から成るシリーズ。18世紀のイギリス(完結巻はアメリカ)を舞台に、外科医ダニエルの助手、エドワード・ターナーの生涯を描いたゴシック歴史ミステリー。第一作目『開かせていただき光栄です』は第12回本格ミステリ大賞を受賞しており、皆川先生の代表作の一つに数えられている。『開かせていただき~』からダークでお耽美な゛皆川ワールド”にハマった人も多いのではないのだろうか。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が……解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくときに哀しい不可能犯罪に挑む。

 この『開かせていただき光栄です』の前日譚を綴っているのが、ハヤカワミステリマガジン11月号掲載の読み切り「Let's sing a song of……」だ。

「Let's  sing a song of……」見どころと感想

※本読切はエドワード・ターナー三部作、最低でも『開かせていただき光栄です」を読了した上で読むことを推奨します。

f:id:oborodukiyo0312:20211023013150j:plain

在りし日の解剖室の面々を楽しめる

 『開かせていただき~』は外科医ダニエルの解剖室から四肢の切断された少年の遺体が見つかり、解剖室の面々が事件に巻き込まれるところから始まるが、今回の読み切りはその少し前の時系列のお話。外科医ダニエルが馭者の公開外科手術を行ったり、助手のクラレンス、ベンが解剖用の遺体を手に入れるため奮闘したりと、(字面だけみると物騒だが)解剖室のメンバーの日常(?)が描かれる。

 これはシリーズ一作目のネタバレになってしまうのだが、『開かせていただき光栄です」はあまり幸せな結末を迎えない。事件に巻き込まれた解剖室の面々を待ち受けるのは哀しく、残酷な真相であり、それ故に一部のメンバーはダニエルのもとを去ることを余儀なくされる。続く二作目『アルモニカ・ディアボリカ』も同様だ。彼らはまたしても予期せぬ‟別れ”に直面することになる。

 だからこそ、エドワード・ターナー三部作を‟知っている”読者にとっては、読み切りで綴られる光景はたまらなく尊く、愛おしく思える。

 ・頑固な外科医、ダニエル・バートン

 ・一番弟子のエドワード・ターナー

 ・天才素描画家、ナイジェル・ハート

 ・饒舌(チャターボックス)クラレンス・スプナー

 ・肥満体(ファッティ)ベン

 ・骨皮(スキニー)アル

彼らが残酷な事件に巻き込まれるのはもうまもなく。

私たちはこのあと彼らを待ち受ける別離を既に知っている。

f:id:oborodukiyo0312:20211023020427j:plain

本読切の扉絵。解剖室のメンバーが全員揃っているだけで泣ける。作中ではあの「解剖ソング」が作られる場面も。

本読切以外にもハヤカワミステリマガジン、興味深い特集や連載が沢山あった。特に「機龍警察」シリーズの特集は必読。

 

宝石商リチャード氏のロイヤルミルクティーを作ってみたー煮出しミルクティーとレンチンずぼらミルクティー飲み比べー

 『宝石商リチャード氏の謎鑑定』シリーズは、集英社オレンジ文庫より刊行されているライト文芸シリーズである。

 類稀な美貌の宝石商・リチャードと彼のお店でアルバイトとして働く大学生・中田正義の2人が宝石にまつわる謎を解き明かすという内容の本作は、辻村七子氏の巧みなストーリー展開とキャラ設定と、雪広うたこ氏の美麗なカバーイラストが好評を博し、累計発行部数80万部にも及ぶ、大人気作品となっている。

 現時点で既刊は11巻、2020年には朱夏によってアニメ化もされた。

f:id:oborodukiyo0312:20211009052700j:plain

 そんな本作における主人公のひとり・リチャードは大の甘党であり、ロイヤルミルクティー過激派。この作品7巻までは基本、一話完結型となっているのだが、ほぼ毎話ロイヤルミルクティーが登場するほどである。

 彼が認めるロイヤルミルクティーのかたちはただひとつ。鍋で煮出したミルクティーだけ。

湯を沸かした鍋に、でかいプラスチックスプーンてんこもりの茶葉を叩き込み、強火でぐつぐつさせ、紅茶の色が出てきたところでミルクを投入、煮立った泡が鍋の縁までぽわぽわ迫ってきたところで火を消す。お盆に載せた二つのカップに、かわるがわる茶こしをかざして、リチャードは鍋からミルクティーを注いだ。

                 『宝石商リチャード氏の謎鑑定』p70より

 ちなみにリチャード氏はイギリス人であるが、このロイヤルミルクティー、日本が発祥である。イギリス生まれイギリス育ちの生粋の外国人である彼が、ロイヤルミルクティーを愛するに至った経緯は、その複雑な家庭環境にあったりする。彼の置かれた立場もまた、本作の見どころなので是非確かめてみてほしい。今日はそんなリチャード氏の大好物・ロイヤルミルクティーをなるべく本作の通りに作ってみた。

 材料はこちら。

・茶葉(アッサム)9g

・水 100ml

・牛乳 200ml

 茶葉はお茶専門店ルピシアで購入したミルクティー用のもの、牛乳はスーパーで売っている明治の「おいしい牛乳」である。

 なお、作中では、使用する茶葉やミルクの量の記載がなかったため、Youtubeにあった動画を参考に決めさせてもらった。参照した動画は以下の通り。「宝石商」アニメのキャスト・内田雄馬氏によるミルクティーづくりの動画と、執事喫茶スワロウテイルロイヤルミルクティーの解説動画である。

(1) 宝石商リチャード氏の謎鑑定 / 内田雄馬のだいたい3分間クッキング① - YouTube

(1) 美味しいロイヤルミルクティーの淹れ方 - YouTube

 手順は次の通り。

1、水100mlをコンロで沸騰するまで温める

2,沸騰したら茶葉を全て投入し、2分ほどぐつぐつ煮込む。

 

f:id:oborodukiyo0312:20211009060314j:plain

煮込んだ後はこんな感じ。中心の粒粒の塊が茶葉、端っこの茶色い液体が紅茶のエキスが煮出されたものである。……控えめに言ってもまずそう。手順はあっているはずだが……。とりあえず続けてみよう。

3、牛乳を入れ、再度コンロの火にかける。鍋の縁が泡立ってきたら火を止める。

f:id:oborodukiyo0312:20211009061305j:plain

そうするとこんな感じに。なんだかロイヤルミルクティーっぽい色味である。茶葉の香りもふわっと匂ってきた。

 これを茶こしで茶葉を分離し、カップに注げばリチャード氏の大好物ロイヤルミルクティーの完成である。

f:id:oborodukiyo0312:20211009062157j:plain

 完成までの時間は5分ほど。案外お手軽であった。

 さて、試飲といきたいが、その前に味の比較用に私が普段作っている「ずぼらミルクティ」も用意しておく。

こちらはもっと簡単。

ティーバッグ2個(ホチキス止めされていないもの、リプトンのイエローラベル等)をカップに入れ水60mlを入れて、軽くレンチン。温まったらそこに牛乳120mlをいれ、「牛乳モード」に設定し再度レンジへ。取り出したら1分置いた後、ティーバッグを取り除く。以上。

f:id:oborodukiyo0312:20211009063138j:plain

こちらも完成したので、さっそく二つを飲み比べてみる。

 まずはいつものずぼらミルクティー。普通に美味しいんだけど牛乳の主張が強い。紅茶感が弱い。

 次に鍋で煮出したミルクティー

……………!!!!

 なにこれめちゃくちゃ美味しい!まず口に運んだところで、茶葉のいい香りが鼻を通り抜けていった。そして何と言っても驚いたのは、その味。紅茶がしっかりと主張している。前者では、口に入れた瞬間、牛乳の濃さが圧倒的だったが、こちらはまず茶葉が前面に出てくる。その上でミルクがちゃんと馴染んでいて、紅茶の味は楽しめつつも、牛乳の甘さ、まろやかさが楽しめる。お店で出てくるロイヤルミルクティーそのもの。

 これは、リチャード氏が過激派になってしまうのも多いに納得である。

 けれどこちら茶葉の消費量が半端ないので、今後は、普段はレンチンずぼらミルクティー、週1の贅沢でリチャード氏のミルクティーを楽しもうと思う。

 

 

 

にほんブログ村 にほんブログ村へ

 

にほんブログ村