月と星とカピバラとー宵の乙女的日常ー

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11月に読んだものの感想・まとめー小説篇ー

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メガ割で購入したものがぜんぶ届きました。ゆるゆるレビューしていきたいです。今回は11月に読んだ本のまとめと感想。時間があれば後でそれぞれ記事にしていきたいです。漫画もまとめようと思ったけれど、想定より文字数が多くなってしまったのでそれは次の記事で。

 

『ジョン、全裸連盟へ行く』北原尚彦/ハヤカワ文庫

 皆様、BBCのドラマ「SHERLOCK」を観たことはありますでしょうか?ベネディクト・カンバーバッチが主演のあれです。もしもホームズが現代にいたら?という現代版シャーロック・ホームズ。ベネ様演じるホームズの変人っぷり、ワトソン氏のちょっと抜けてるけど頼れる相棒感がたまりません。最新の科学技術を駆使しての推理も必見。

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 そんなBBC版「SHERLOCK」のパスティーシュ作品がこちら。原作シャーロック・ホームズではなく、現代版ホームズの二次創作。いや、これ商業として発売できたのすごいな。この本、短編集でして全6話が収録されています。表題作の「ジョン、全裸連盟へ行く」は、221Bを訪れた客の依頼を受けてジョンが文字通り全裸で過ごすことが決まりごとのクラブ「全裸連盟」へ潜入するお話。なんじゃそりゃ?と思いますが、その団体にはとある秘密があって…。オチはちょっとジョンが気の毒だけど、思わずクスッと笑ってしまうようなもの。どのお話も短いながら上質なミステリだったり、オチが秀逸だったりと魅力たっぷり。個人的に一番面白かったのは「ジョンと人生のねじれた女」でした。また先の全裸連盟が原作の赤毛連盟のオマージュであることは自明ですが、他の短編も「まだらの紐」や「唇のねじれた男」等のオマージュで、原作へのリスペクトが感じられるのも良いところ。ドラマのあの事件の合間にはこんなことがあったんだなとキャストを思い浮かべつつ妄想するとより楽しめます。

『おひとり様作家、いよいよ猫を飼う。」真梨幸子/幻冬舎文庫

 猫好き・作家のエッセイ好きとして、タイトルだけで「買うしかなくない!?」となった本。真梨幸子先生と言えば、『殺人鬼フジコの衝動』などいわゆるイヤミスの印象が強いですが、こういう文章も書かれるんですね。作家デビューは果たしたものの鳴かず飛ばずで極貧生活をしていた頃のことから、フジコがヒットした時の話、買っている猫ちゃんにメロメロな日々の様子まで作家・真梨幸子のプライベートが覗ける一冊です。合間に出てくる先生の愛猫の写真がたまらない……!!なお、猫ちゃんが出てくるのは中盤になってからです。

 個人的に印象に残ったのはやはり先生の極貧時代のお話でしょうか。デビューして4年も売れず、執筆の傍ら派遣バイトを掛け持ちする日々。それでも年収200万いくか行かないか。更にはマンションのローンまで抱え……という。本屋に行っても自分の本が一冊も置いていなかったエピソードとか地味に堪えます。自分が同じ立場だったら4年も経たずに作家辞めていることでしょう。それでもフジコのヒットで人気作家の仲間入りを果たした先生は(実力は勿論あるけど)おそらく運のいい方。今でも執筆だけで食べていけない作家なんて7-8割くらいいるんじゃないでしょうか。出版業界、時代遅れのビジネスモデルどうにかしようよ……。推し作家にスパチャさせろ下さい。

 重いエピソードもあるとはいえ、文章自体は軽快でとても読みやすいです。何気ない日々の記録から感じられる先生の知識量の多さとか、感受性の高さ、猫ちゃんに甘々な姿なんかも魅力。作家さんのエッセイ気になるけど小難しそう……って人におすすめしたい一冊です。

『革命前夜』須賀しのぶ/文春文庫

 幕末が舞台の和製ロミジュリこと『荒城に白百合ありて』が面白かったので、同作家さんの作品のなかでも評判の良い『革命前夜』も購入。少女小説好きと言っておきながら荒城が出るまで須賀先生を履修してなかったんですか?!とか言ってはいけない

 舞台は、ベルリンの壁崩壊前のドイツ。ピアニストの眞山柊史(以下シュウ)はバブル期の日本を離れ、東ドイツに音楽留学をしています。天才ヴァイオリニストのラカトシュや、秀才イェンツ、北朝鮮からの留学生で独自の演奏技術を持つ同じピアノ科の李など、才能に揉まれながら自分の音を追い求めるシュウは、ある時教会で美しい音色を奏でるオルガン奏者の女性と運命の出会いを果たすことに。けれど、彼女はシュタージ(国家警察のようなもの)の監視対象者で……というストーリー。冷戦下の不安定で閉鎖的な東ドイツで、主人公が音楽家として成長していくさまを描いています。

 この作品の一番の魅力は、やはり須賀先生の描写の巧みさにあると思います。私たちは当時の東ドイツのことなんて歴史の知識でしか知らない筈なのに、作中の世界観に難なく入り込むことが出来る。これについては解説で朝井リョウ先生が分かりやすく説明して下さっているので、そちらの引用を。

 前者は、自分自身が存在しない世界を舞台に物語を作り上げることができる。この作品の舞台である、ベルリンの壁崩壊直前のドイツに、須賀さんはいない。取材のために赴くこともできない。ピアニストを目指す主人公のように、ドレスデンにある音楽大学に留学したこともないはずだ。だけど書けるのだ。須賀さんの文章は、対象への巨大な好奇心、興味関心、そして圧倒的な想像力と構成力に基づいている。

 歴史小説にしろファンタジー小説にしろ、私たちが経験していない、知らない世界が舞台の作品において、読者に何の違和感も持たせずに物語にのめり込ませるには相応の力量が必要だと私は思っていますが、須賀先生はその力が飛びぬけている。東の不自由で閉鎖的な環境に不満を持つ人たち、反面シュタージに秘密裏に協力する人物たち、密告によってばらばらになる一家……。各々の苦悩や悲哀をドイツにおける他者であるシュウの目を通して描写することにより、読者が感情移入しやすくなっている。世界史の教科書にでは他人事のようにしか思えなかったベルリンの壁崩壊にあんなに感動するとは……。最後の一ページが神。当時の東ドイツの光景をありありと思い浮かべることが出来るような巧みな情景描写にも脱帽。そして須賀先生、音楽を「書く」技術も凄いです。恩田陸以来だよ。文章でピアノの音色を想像できるなんて。

『虚構推理短編集 岩永琴子の純真』城平京/講談社タイガ文庫

 雪女関連の短編2つが面白かったです。虚構推理シリーズ、「嘘で事件を解決する」っていうコンセプトが新鮮でいいよね。岩永琴子嬢はやは可愛い。アニメ2期決定おめでとうございます。 

『悪役令嬢と鬼畜騎士』猫田/一迅社

※辛辣なので注意

 インスタで漫画版の広告を見て「お!!これは激重なヤンデレ!!」と期待して購入。小説版にしたのは、漫画が分冊販売だったのと単純に文のほうが基本好きだからです。期待しすぎました。なろう系漫画原作ライトノベルって、漫画で読んだ方がいいわ。絵で印象大分変ってくるし、不要な部分削ってくれるし。男性のツェツィに対する激重感情は好みでしたが、如何せん文章が痛々しい。主人公・ツェツィは前世記憶持ちの悪女なんですが、彼女の心情描写が……。前世で一般人だった人(しかも性行為の経験もある)が、終始無知でか弱くて鈍感ですって感じなのがせっかくの前世記憶持ち要素を台無しにしていて。男性陣が主人公の絶世の美貌にやられてノックアウトされていくさまを「え?みんなどうしちゃったの?私何かしちゃった?」みたいに受けてるのにありえねーよと突っ込んでしまったごめんなさい。なんか古の夢小説の天然愛され系美少女主人公感についていけなかったです。これが商業……??メインヒーローなろう主人公っぽい薄っぺらい最強描写も苦手でした。これから読む人は漫画版のほうが多分いい。

 

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