月と星とカピバラとー宵の乙女的日常ー

お洒落もオタ活も頑張りたいオタク。

これは戦う私たちのための少女漫画ー高野ひと深『ジーンブライド』感想ー

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  だんだん寒くなってきました。キーボードを触る指が驚くほどひんやりしていてビ

ビります。そろそろ音ゲーユーザーには辛い時期になりそう。今日明日はプリライです

が、現地参戦の方は寒さ対策をしっかりして下さいね。メットライフドーム、マジで寒

いので(県民)。プリンセスみんなが笑顔でライブを楽しめますように。

 さて、今日の記事は最近読んで面白かった漫画について。終ヴィル救済√の感想の冒

頭でちょこっと言及したやつです。私、その月の新刊は調べて、何を買うか事前に決め

ているんですが、この新刊は完全にノーマークでした。作者さんの試し読みツイートが

たまたま回ってきてよかった……!Twitterの販促から漫画を買ったのって実は初めて。

それくらい試し読みで心奪われた作品です。

 作品名は「ジーンブライド」。「ジューン(June)」ではなく、「ジーン(Gene)」で 

す。遺伝子という意味の単語。作者は「私の少年」で有名な高野ひと深先生。下のあら

すじは公式様より引用しました。

女であるゆえの生きづらさに、日々新鮮に絶望する諫早依知(30)。 
仕事相手からのセクハラにも、変質者との遭遇にも飽き飽きだ。
そんな彼女の元へ、元同級生の正木蒔人が突然会いに来た。 
15年前の出来事の礼に来たと言う彼を依知は警戒するが、独特なペースで生きる蒔人は依知を全くおびやかさない。
依知の護身のための奇抜な解決策を蒔人が提案したり、イレギュラーな事態に弱い蒔人の探しものを依知が手伝ったり。
凸凹なふたりは互いに助け合う仲になっていき……?

これは、現実を生き抜くあなたの手を取る物語。

 この漫画の特筆すべき点は、女性なら誰しもが共感する要素がふんだんに盛り込まれ

ているところ。主人公の諫早依知は、女であるが故の「生きづらさ」に対し、日々絶望

と諦めを感じている女性。彼女がランニングコースで自分を見て〇〇〇ーをするおっさ

んに遭遇したり、仕事で男性と二人きりになった瞬間、セクハラまがいの質問を受けた

りする姿は女ならみんな既視感を覚えるんじゃないでしょうか。バイト先で初めてセク 

ハラ電話を受けた時を思い出したよ私は。顔も名前も知らない女相手にハアハア言って

んじゃねーぞ。

 作中でとりわけきつかったのは、依知が「女だから」仕事で男性と同じ土俵にすら立

てなかった場面。依知は記者のような仕事をしており、映画監督に新作の演出について

インタビューするシーンがあるのですが、真面目に仕事をする彼女に対して監督は、

「こんな綺麗な方初めて見た」とか「そんなに褒められると男はみんな勘違いしちゃ

う」と真面目に取り合っていない様子。取材後の依知の心の声「はァ~~~うんこたれ

がよ」にガチで共感。

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 依知の時は上記のような態度だった監督ですが、別の機会で男性である蒔人が依知と

全く同じ質問をしたときは、「良く気づいてくれた!!」とでもいうように、映画監督

として、嬉しそうな笑顔を見せるんです。お前依知の話なんも聞いてなかっただろ。仕

事で来てたんだぞ彼女は。自分が男だったら、仕事に対してもっと真剣に向き合ってく

れたんだと気づいてしまった依知の心情は如何ばかりか。もう一巻だけでも身に覚えの

ある「女性だから」起こることが多すぎて、依知への共感が強くなるばかり。それら一

つ一つに怒りを覚えながらも、どこか諦めた様子の彼女の様子もリアルです。何故こち

らが慣れなければならないのか。

 そして女にしかわからない生きづらさをより強調しているのが、蒔人の鈍感さ。彼は

依知が何故男性への取材のとき同行を頼んだのか(セクハラ自衛)、何故女性が虫よけ

用の指輪を探すのか、何故トイレにペンがあると女は場所を移動するのか(盗撮)全く

分かっていない様子。ネジに見せかけた小型カメラとか靴に仕込むレンズとか女性なら

注意喚起でみんな知ってそうだけど、男性側の認識は薄いものなんでしょうか。こっち

は電車で向かい側に座っている男性のスマホの向きにすら恐怖を覚えることがあるとい

のに。そんな鈍感な蒔人に対する依知の「いいよね。あんたらはあんたらのことだけ考

えてりゃいいんだから。あたしらはあんたらのことまで考えておかないと死ぬかもしれ

ないってのに」言葉の威力は凄まじいです。依知の強烈なカウンターを受けて、色々調

べる蒔人さんが真面目で可愛い。

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 第一巻は導入のような感じで、依知と蒔人がちょっとした出来事の数々を経て、仲良

くなっていく様子が丁寧に描かれています。第二巻以降で依知が男性不振に陥るきっか

けとなった学生時代の事件や2人の通っていた学校の独自システム・ジーンブライドに

ついて明かされるようですが、それらも含め、これから2人がどんな道を辿るのかに注

目。

 この作品のキャッチコピーは『このクソみたいな世界で生き抜くあなたをこの物語は

決してひとりにしない』。等身大の女性主人公・依知がどうやって理不尽な世の中を生

き抜いていくか一人の女性としてとても楽しみです。