月と星とカピバラとー宵の乙女的日常ー

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12月に読んだものの感想・まとめ~小説編~

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 先月の読了本は4冊。うち『時の娘』は卒論研究も兼ねてます。

先々月の読了はこちら。

 

www.yoi-otome.net

 

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目次

 

全裸刑事チャーリー/七尾与史/宝島社

あらすじ

 ヌーディスト法が施行されて一年がたった。人々の価値観が多様化して、ついに日本は全裸生活を認めることとなった。反対勢力も強く、国会は揉めに揉めたが、ヌーディスト派である時の総理大臣が「全裸は究極のエコだ」と意味不明な理屈でごり押しして、彼は生まれたままの姿で法の施行を高らかに宣言したのである。それは警視庁も例外ではなく、全国初の全裸刑事が登場した ――。 警部・茶理太郎、通称チャーリー。捜査一課強行犯第5係に属する全裸刑事が、数々の難事件を解決に導く !

 『ドS刑事』や『死亡フラグが立ちました!』の七尾与史先生の新作。実はこの方の作品を読んだのは初めてだったりする。あらすじだけでも分かると思うけれど、とんでもない作品が出ました。ちなみに目次はこんな感じ。いや~~、ヤバい。
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 舞台はヌーディスト法が施工された現代日本。人々は生まれたままの姿で日常を過ごす全裸派と着衣派に分かれています。全裸派のために全裸専用車両があったり、全裸専門ファッション店(自主規制用のペイントや服が売っている)があったりと、全裸カフェ(コーヒーに入れる砂糖を自主規制でかき混ぜるのである。衛生管理ェ…)があったりと世紀末か?!と言いたくなる有様。身体を鍛えている人の裸ならまだしも、脂肪だるだるのおっさんの全裸が強制的に視界に入ってくるとか地獄では?

 そんななか、全国で初めて誕生したのが全裸刑事・チャーリーこと茶理太郎。「全裸こそ人のあるべき本来の姿」と主張する彼は、元々、トレンチコートの似合う数々の事件を解決してきた名刑事だった。全裸になってからもその推理力は健在。自主規制が切り取られた遺体の謎や、全裸派の男性同士の痴情の縺れなどを巧みに解決していく。チャーリーの部下で語り手の七尾(作者と同名、着衣派)や、実家が下着屋で全裸派を憎むチン紋(察して)鑑定の名手・ベンさんと、チャーリーとのコミカルで下品なやり取りも面白い。

「七尾。この期に及んでお前はまだそんなものを着てるのか?」

「ええ。スーツは僕のポリシーです。僕は原子じゃありませんからね」

「服なんてものは虚飾だ。そんなもので飾り立てないと人前に出られないなんて情けな  いと思わないのか。そんなんだからお前は物事の本質を見失うんだ」

「チャーリーさんの股間の本質なんて見たくもないですよっ!」

博多豚骨ラーメンズ/木崎ちあき/メディアワークス文庫

あらすじ

 主が戻った探偵事務所に、女子大生の素行調査が舞い込んだ。馬場と林の潜入先となった高校に、なぜか復讐屋マルティネスと麻薬取締官リカルドの影がちらつき……。
 青少年を狙う違法な麻薬取引を追う二人が、博多の街を蝕むある組織の存在に近づいていくなか、馬場と林も巻き込まれていく。一方、別の依頼で動いていた榎田も加わり、事件は思いも寄らぬ混迷へと向かっていき―ー。
 ハロウィンの狂騒に浮かれる博多の夜に、悪人同士の化かし合いが開幕する!

 何気にアニメ2期を期待している『博多豚骨ラーメンズ』シリーズの第10巻。金遣いが荒い娘の素行調査を受け潜入捜査に乗り出した、探偵の馬場と居候で女装の殺し屋・林。麻薬取引の元締めを狙う、麻薬調査官のリカルドと拷問屋のマルティネス。人生に絶望し死ぬ前に強盗を計画する、ネット掲示板で集まった3人。それを手伝うハッカーの榎田。それぞれの関わる事件は複雑に絡み合い、ハロウィンの夜の思わぬ混沌へと繋がっていきます。
 それぞれターゲットを追い求め、ナイトクラブのハロウィンイベントに潜入するのだけど、強盗とハロウィンの仮装のおかげで面倒くさい事態になってしまうのが今回のおもしろポイント。成り行きで発生した、探偵所コンビと麻薬調査コンビの共闘が胸アツ。はかとんと言えばやっぱ戦闘シーンよ。馬場が飛ばした鉄パイプがリカルドの相手の頭にクリーンヒットするところがツボ。裏社会の男たちの痛快な群像劇は10巻でも健在です。

時の娘/ジョセフィン・テイ/ハヤカワ文庫

 卒論がシェイクスピアの『リチャード三世』だったので研究がてら読了。リチャード三世は、英国でもっとも悪名高い王様。王位継承者の王子たちを暗殺し、玉座についたとされていますが、そんなリチャード三世悪人説に一石を投じたのが、およそ70年前に刊行された本作。(この作品以前にもリチャード三世擁護論はあったが、世間一般にそれが広く知られるきっかけとなったという意)

あらすじ

国史上最も悪名高い王、リチャード三世――彼は本当に残虐非道を尽した悪人だったのか? 退屈な入院生活を送るグラント警部はつれづれなるままに歴史書をひもとき、純粋に文献のみからリチャード王の素顔を推理する。安楽椅子探偵ならぬベッド探偵登場。探偵小説史上に燦然と輝く歴史ミステリ不朽の名作。

 犯人追跡中にケガをしたスコットランドヤードのグラント警部。知人に勧められ、歴史のミステリーを調べて暇をつぶしていた彼は、リチャード三世の肖像画を目にして、疑問を覚える。「この男は本当に悪人なのか?」。なんとこのグラント警部、長年の捜査経験から、相手の顔を見るだけで、その人の性格を見抜き、事件の犯人を見分けることが出来るという特異な能力を持っているである。けれどもそんな彼のリチャード三世に対するファーストインプレッションは「あまりに良心的すぎた人物」。自らの疑問を確かめるため、グラント警部は、文献から歴史上の真実を紐解いていく。

 リチャード三世に対する世間の印象は、シェイクスピアが戯曲『リチャード三世』において彼を極悪非道な悪党として描いたことに拠るものが大きい。しかし実際のところ、リチャード三世が作中で書かれているような悪行(甥殺し、敵対貴族の処刑)等を率先して行ったという証拠は見つかっていない。また、シェイクスピアはリチャード三世が戦いで敗れたチューダー朝に生きた人物であり、『リチャード三世』がチューダー朝の正当性を主張するために書かれた作品である可能性は十分にあり得る。

 本作『時の娘』はミステリ小説という形態でありながらも、そんな捻じ曲げられたかもしれない歴史の真実に迫る作品となっている。

またあおう/畠中恵/新潮文庫

 妖の見える大店の跡取り「若だんな」と、彼の周囲を取り巻く妖たちの活躍を描く、「しゃばけ」シリーズの番外編。

お江戸は日本橋。長崎屋の跡取り息子、若だんなこと一太郎の周りには、愉快な妖たちが沢山。そんな仲間を紹介しようとして楽しい騒動が起きる「長崎屋あれこれ」、屏風のぞきや金次らが『桃太郎』の世界に迷い込む「またあおう」、若だんなが長崎屋を継いだ後のお話で、妖退治の高僧・寛朝の形見をめぐる波乱を描く「かたみわけ」など豪華5編を収録した、文庫でしか読めない待望のシリーズ外伝。

 特に印象的だったのは、名僧・寛朝が亡くなった後の話。あの病弱な若だんなが長崎屋を継いでいることに時の流れを感じて、嬉しくなった一方、準レギュラーだった寛朝さんが亡くなったことに一抹の寂しさを覚えたり。亡くなったあとも、訳アリの品を巡ってひと騒動起こしてしまうあたりが(本人のせいじゃないけど)寛朝さんらしい。妖たちが付喪神によって本の中に引っ張りこまれ、桃太郎の鬼役にさせられてしまう話も面白かったです。屏風のぞきってたまにめっちゃかっこいいところ見せるよね。

 
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