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皆川博子『開かせていただき光栄です』読切前日譚「Let's sing a song of……」感想(ハヤカワミステリマガジン11月号)

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 皆川博子先生の代表作『開かせていただき光栄です』の読み切りが、ハヤカワミステリマガジン11月号に掲載されていると聞き、購入。つい数か月前に、この「エドワード・ターナー三部作」完結巻の『インタビュー・ウィズ・ザ・プリズナー』が刊行されたばかりだったけれど、まさか読切という形でエド達バートンズに再会できるなんて!!と感無量。という訳で今回は、この読み切りについての感想を。

そもそも「エドワード・ターナー三部作」って?

 ダーク・ミステリの女王・皆川博子先生が綴る『開かせていただき光栄です』、『アルモニカ・ディアボリカ』、『インタビュー・ウィズ・ザ・プリズナー』の三作から成るシリーズ。18世紀のイギリス(完結巻はアメリカ)を舞台に、外科医ダニエルの助手、エドワード・ターナーの生涯を描いたゴシック歴史ミステリー。第一作目『開かせていただき光栄です』は第12回本格ミステリ大賞を受賞しており、皆川先生の代表作の一つに数えられている。『開かせていただき~』からダークでお耽美な゛皆川ワールド”にハマった人も多いのではないのだろうか。

18世紀ロンドン。外科医ダニエルの解剖教室から、あるはずのない屍体が発見された。四肢を切断された少年と顔を潰された男性。増える屍体に戸惑うダニエルと弟子たちに、治安判事は捜査協力を要請する。だが背後には、詩人志望の少年の辿った稀覯本をめぐる恐るべき運命が……解剖学が先端科学であると同時に偏見にも晒された時代。そんな時代の落とし子たちがときに可笑しくときに哀しい不可能犯罪に挑む。

 この『開かせていただき光栄です』の前日譚を綴っているのが、ハヤカワミステリマガジン11月号掲載の読み切り「Let's sing a song of……」だ。

「Let's  sing a song of……」見どころと感想

※本読切はエドワード・ターナー三部作、最低でも『開かせていただき光栄です」を読了した上で読むことを推奨します。

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在りし日の解剖室の面々を楽しめる

 『開かせていただき~』は外科医ダニエルの解剖室から四肢の切断された少年の遺体が見つかり、解剖室の面々が事件に巻き込まれるところから始まるが、今回の読み切りはその少し前の時系列のお話。外科医ダニエルが馭者の公開外科手術を行ったり、助手のクラレンス、ベンが解剖用の遺体を手に入れるため奮闘したりと、(字面だけみると物騒だが)解剖室のメンバーの日常(?)が描かれる。

 これはシリーズ一作目のネタバレになってしまうのだが、『開かせていただき光栄です」はあまり幸せな結末を迎えない。事件に巻き込まれた解剖室の面々を待ち受けるのは哀しく、残酷な真相であり、それ故に一部のメンバーはダニエルのもとを去ることを余儀なくされる。続く二作目『アルモニカ・ディアボリカ』も同様だ。彼らはまたしても予期せぬ‟別れ”に直面することになる。

 だからこそ、エドワード・ターナー三部作を‟知っている”読者にとっては、読み切りで綴られる光景はたまらなく尊く、愛おしく思える。

 ・頑固な外科医、ダニエル・バートン

 ・一番弟子のエドワード・ターナー

 ・天才素描画家、ナイジェル・ハート

 ・饒舌(チャターボックス)クラレンス・スプナー

 ・肥満体(ファッティ)ベン

 ・骨皮(スキニー)アル

彼らが残酷な事件に巻き込まれるのはもうまもなく。

私たちはこのあと彼らを待ち受ける別離を既に知っている。

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本読切の扉絵。解剖室のメンバーが全員揃っているだけで泣ける。作中ではあの「解剖ソング」が作られる場面も。

本読切以外にもハヤカワミステリマガジン、興味深い特集や連載が沢山あった。特に「機龍警察」シリーズの特集は必読。