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カーストヘヴン8巻感想(一部ネタバレ有)カーストから始まった2人の恋の行方は?

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 緒川千世先生の大人気スクールカーストBL・『カーストヘヴン』の最終巻の感想になります。

カーストヘヴン|緒川千世|ビーボーイWEB (b-boy.jp)

 

本作の簡単なあらすじ

 舞台はカーストゲームという特殊なゲームがある学校。カーストゲームは校内にばらまかれたトランプのカードを探し、見つけたカードの種類によって、クラス内の立場が決まるというもの。主人公の梓は、これまでクラスの頂点・キングとして君臨していたが、次のカーストゲームによって、クラスの最底辺・ターゲット(いじめの標的)に落とされる。

 梓に代わってキングの座を手に入れたのは、ずっと彼の忠犬として働いていた刈野。刈野はキングの立場を利用して、梓を抱くように。

 けれども、どんなに虐げられようと梓は刈野に屈しない。その態度は刈野を余計煽るもので……。歪な関係性から始まる2人の行く末は?というお話。

 シリアス、執着もの、強気な主人公が好きな人におすすめ。

 サブのCP、久世(執着)×あつむ(真面目、穏便)

      仙崎(狂気、鬼畜)×巽(似非優等生、破滅願望)

のストーリーも重厚で見逃せない。

前巻(7巻)の振り返り

 近づきつつあった刈野と梓の距離。だが梓を敵視するエノの策略によって、2人の関係性は希薄になる。そんな中、卒業イベントと称し、梓を再び陥れる計画を立てるエノ。阻止するべく動く刈野だが、梓は捕らえられる。今にも集団で犯されそうな梓をかばう刈野。キングとしてあるまじき行動をとった刈野はどうなる?!

ネタバレなしのざっくりした感想

 良かった。この一言に尽きる。前巻の終わり方からどう着地するんだろうと思っていたけれど、流石は緒川先生。綺麗に物語をまとめてくれた。まず、表紙からして神。超険悪な状態から始まった2人が、こんな風に抱き合えるようになるなんて3巻あたりまでは想像もしていなかった。ラストは少し駆け足だったようにも思えるが、それぞれが抱えていた事情も無事解決。次のカーストゲームで梓が決めた選択は本当に良かった。彼の成長が伺える。もともと家庭環境故に周りになめられまいと横暴な振る舞いをしていただけで根はいい子だもんね。10年後の主人公たちを描いた加筆エピソードも良き。仙崎と巽のCPほんと好きです。梓と刈野の2人は10年経っても変わらなくて、微笑ましかった。

ネタバレ有りの感想 

 前巻で梓をかばってしまった刈野。

 キング失格の烙印を捺され、リンチを受ける刈野の姿は憐れ。そして絵面がショッキング。あの刈野がモブに頬を殴られ、腹パンされ…なんて誰が想像していただろう。王の座から転がり落ちた瞬間、周りの生徒が豹変し、我も我もと殴りにいくのが怖すぎる。……この光景、梓がターゲットに転落した時も見たよなあ。

 手酷く痛めつけられた刈野は入院することに。さっさと転校しようぜこんな怖すぎる学校。(物語が成立しないので無理)(そもそも梓も刈野も逃げるタイプではない)。

 その間にクラスでは、キングの席が空いたことを理由に、再びカーストゲームが行われることが告知される。もちろん、現ターゲットの梓も参加可能。それを聞いた梓は、刈野の入院先を知るため、巽のいる図書室に。「刈野をゲームに参加させる。また俺と勝負だ」という梓。梓はこの時点では、カーストゲームでしか刈野との関係を構築できないと思ってるんだよなあ。もうお互い惹かれ合ってるのは明白なのだから、「勝とう」とか「引きずり降ろそう」とか考えなくてもいいものを。今まで母親のためになめられないよう生きてきた梓には、難しいんだろうなあと思いつつ。ここでの巽の返答も良かった。巽君、仙崎によって色々変えられた人だもんね。

 入院先を訪れるも面会を断られ、外に座り込んだ梓が雪を見て思い出したのは母の姿。ここの回想がジンと来た。母を守るために、力がほしいと思った幼い日の梓。するとそこへ、病院を抜け出してきた刈野が。「自分たち親子には頼れる人は誰もいない」という回想を挟んでのこれ、過去と現在の対比みたいになってていい。ちょっと照れた感じの梓の表情が可愛いんだよね。今の梓には、お母さん以外にも刈野やあつむ君や他にも繋がりのある人がちゃんといるんだよなあ。

 コンビニに行くという刈野に付き合い、土手沿いを一緒に歩く梓。週明けにまたカーストゲームが行われることを話し、「どっちがキングになるか勝負しよう」と持ち掛ける。それを断り、自分はゲームから降りると答える刈野。馬鹿にしているのかと憤慨する梓に、「取り繕うのはやめた。ありのままの自分で梓に触れたいから」と返答する刈野はかっこよかった。お前……!やっと素直になって!!

 それに対し「カーストゲーム以外で刈野とどう繋がればいいのか分からない」と涙を流す梓も「らしい」なあと。母親以外を拒絶して生きてきたからこその考え方というか。進学してカーストゲームを知る前から、社会的弱者の子供というハンデを背負った梓にとって、カーストなんて幼い頃から身近に感じていたものなのだろう。そんなカーストにおいて、敗者にならないために、梓は力でねじ伏せることでしか他者と接してこなかった。だからこそ、ゲーム以外で刈野とどうけじめをつければいいか分からないといのは非常に納得できる。

 けどこのままだとハッピーエンドに繋がらない訳で。戸惑う梓にバードキスをして「鎧がなくたって俺らは繋がれる」と告げる刈野。よくやった!初期は梓へのあたりの強さにまあまあ腹が立つこともあったが、流石は梓と結ばれる男である。

 そして週明け。新しいカーストゲームでの梓の選択は、少し驚いたけれどもとても納得のいくものだった。その裏であったエノや大昇のあれそれも綺麗に片付いてすっきり。エノも色々ヤバい人だったとはいえ、元は被害者側なので救われてよかった。まあ、エノが拗らせちゃったのは、神楽のせいでもあるんだけどね!神楽がもっと早く勇気を出していれば、文化祭事件とか起こらずに済んだかと思うと複雑ではあったり。

 カーストゲームの結末を見届け屋上で抱き合う2人。梓を見る刈野の目が優しいんだんだよなあ。

 最終話は卒業式。みんな仲良く?写真を撮ったりと微笑ましい。巽が途中で拉致られたのにはビビったけど。最終話だぞ!?まあ、どうせ犯人は仙崎なのでね。(恐らく)式をさぼった梓と刈野の様子に思わず笑ってしまう。路肩のバスをさして「あのバス乗るか。行き先なんて決めずに行けるところまで」ってなんかエモな台詞では?!

 書き下ろしは10年後のみんなの話。あつむは学校の先生に、久世はかなり稼いでるっぽいリーマンに。あつむが生徒からもらったお菓子にやきもち焼いちゃう久世は相変わらず執着体質で良き。それを受け止めてしまうあつむ君も変わらず天使。

 巽は刈野のお父さんの議員秘書的なことをやってるっぽい。上手くいかないことについては、裏の方から根回しもしているみたい。そしてその根回しを頼む裏社会の人間は……。こちらの2人も相変わらず。アブノーマルな関係性っていいよね。愛のあるSMは最強。

 そして梓と刈野。刈野は父親の跡をついで政治の世界へ。その経歴と顔立ちから女性に大人気だとか。そして、梓はなんと記者になっていました!大物政治家の不倫を掴むほど優秀な梓が狙うのは刈野のスクープ。恋人同士なのに対立する立場っていうのが学生時代を彷彿とさせる。心が通じ合っているという点は違ってるけど。レコーダーを隠し持って刈野の部屋を訪れる梓も、アイドルとの密会写真について口止めと称して意地悪しちゃう刈野も可愛い。というか仙崎・巽ペアと梓・刈野ペアはもはや仕事が恋のスパイスになってるでしょ。