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竜騎士07氏は同人から脱却出来ていないのでないか~ひぐらしのなく頃に業・卒を視聴しての感想~

 

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 一週間ほど前の話にはなるが、「ひぐらしのなく頃に 卒」最終話をリアタイで視聴した。神楽し編三話のトンでも異能力バトルから「もうこれはどうしようもないのでは?」と感じてはいたが、何せ‟あの”ひぐらし。もしかしたら、最後の最後でどんでん返しがあるかもしれないと1ミクロンほど期待していたためである。

 ……駄目だった。

 梨花と沙都子は、何事もなかったかのようにとまではいかないものの、あっさりと和解し、梨花はルチーアへ、沙都子は雛見沢に残るという選択をする。その後これまでひぐらしに関わってきた人物が映され、「Youー卒業ー」が流れる。沙都子はSSR鉄平と幸せに暮らしましたとさ。そんな雛見沢を見守りながら、羽生が満足げな笑みを浮かべて終了。何だこのとってつけたような感動演出。

 平和な雛見沢を観て、視聴者ももちろんニッコリ、大満足。………いや、そんなわけがないんだわ。

 鬼騙し編の意味深な看護師は?圭一はタフすぎただけ?作画ミスでは済ませれないほどの反転描写の数々は?雛見沢のバーサーカーと呼ばれた詩音は何処へ?鷹野と富竹はほぼ放置?悟についての描写それだけ?エウアって暇つぶしか何かしにきたの?

 これが同人か二次創作であれば、まあ別にいい。ご自由にどうぞ。ただ、商業作品で、原作者自らが書き下ろした脚本で、この終わり方は如何なものかという話である。

 そもそも原作者である竜騎士07氏は「自分が書きたいものを優先するあまり、読者を置いてけぼりにしがち」なタイプの作家である。その傾向は「うみねこのなく頃に」を通った者には周知の事実であろう。これが同人作家出身という環境故か、単に本人の資質故かは分かりかねるが。

 が、その事実を考慮しても、「ひぐらし 業・卒」は商業でやる内容としてあまりにも酷い。例えば旧ひぐらしはそのファンタジー要素に多少の批判はあれど、惨劇の数々に関する解は、雛見沢症候群、黒幕の存在といった要因によって、詳らかになっている。

 「うみねこのなく頃に」に関しても、原作EP8の真相丸投げ感については批判の声が多いものの(漫画で原作の補完をさせるのは如何なものか)、入念に練られたメタ構造的な展開には目を見張るものがある。そして何より(「ひぐらし」の評判によって、発売時より注目されてはいたものの)「うみねこ」は同人サークルから出た作品である。

 対して「ひぐらし業・卒」。旧作は「うみねこ」同様に同人で発表された作品であるが、今回の新作は明らかに商業的なかたちで制作されたものだった。制作サイドから竜騎士07氏に持ち掛けられたものなのか、はたまたその逆か。原作者のコメント等を見る限り、後者である気がしないでもないが。

 何にせよ「あのひぐらしがリメイク」と大々的に銘打ってのアニメ化、同時進行のコミカライズ、リアルイベントの企画等、一連の新プロジェクトが商業的な展開でもって動いていることは自明の理であった。

 ここで問題となってくるのが、同人と商業の違いである。この2つの違いとは何か。簡単である。営利か非営利か。ただそれだけだ。

 一般的に同人は、個人が趣味で「作りたいものを好きなようにつくる」ものである。当然、印刷やイベントへの出店にかかる費用も全て自己負担。作品が売れず、最終的な収支がマイナスになったとしてもそれは自己責任である。むしろ「売れなくてもいい!自分がこういう話を読みたいから、或いは創作が好きだからやる!」というスタンスの人が大半ではないか。

 私も過去に一冊だけ同人誌を出したことがあるがあんな活動、好きでなければ続けられるわけがない。原稿の作成、表紙の依頼、イベントの申し込み、入稿、エトセトラ、エトセトラ……。学業や仕事の合間を縫って全てこなすには、相当な根気がいる。しかも、活動の大半は赤字。

 そんな苦労とリスクを背負っているからこそ、同人作家は読者/プレイヤーの需要を気にせず、自由に活動ができるのである。

 それに対して、商業は「消費者の需要を掴んで、作品をつくる」ことが必須である。何故ならば作り手と消費者の間に、出版社などの第三者が介在するからだ。この場合、作り手は、消費者との間で橋渡しをしてくれるこの第三者のためにも利益を上げなければならない。そうでなければ、彼らが潰れてしまう。

 正直今回のひぐらし新プロジェクトにおいて、竜騎士07氏には「商業的な面に対する考慮」が欠けていたように私は感じた。

 「うみねこ」はいい。事件の真相をプレイヤーに丸投げしようが何しようが、あれは氏が自らのサークルで「同人作品」として発表したものだからである。たとえ氏のファンが落胆して離れようと、その跳ね返りは竜騎士07氏のみにしか行かない。

 だが、今回の「ひぐらし業・卒」は紛れもない商業作品だ。一連のプロジェクトには制作会社や下請け、配給会社、コミカライズに関わる出版社など、数えきれないほどの人が携わっている。果たして今回の新作は、彼らが割いた労力と制作費に見合った売上を出せるのだろうか……。

 駄目だったのは、魔女でも大団円でも梨花と沙都子の愛憎でもない。商業作品で諸々の謎や伏線、各キャラの個性をおざなりにし、綺麗にまとめ上げることをしなかった脚本とそれを止められなかった制作側である。

 それにしてもひたすらヘイトを向けられる役割になった沙都子がいたたまれない。彼女が精神的に幼いのも、梨花に執着向けちゃうのも分かるんだけど。目明し編の拷問に屈しなかった沙都子はどこへ行ってしまったのだろう……

 

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